
幼少期の頃から続けている習い事がある。
書道だが35年ぐらいになる。
おおよその資格はクリアし教授・師範クラスを取得。
昇級する楽しみはなく、ひたすらに腕が落ちないようにしているといったところ。
正直に言うと、ここまでくるともう辞め時が分からない。
それと、辞められない理由も少しはある。
恩師は親の次に私の成長を見守ってきてくれた。
80歳を超えいまだ現役で活躍している。
この先生、年齢の割にというと失礼だが、
とても好奇心旺盛で活動的で、意欲的でありながら、
自分の能力を過信することなく謙虚にいつも自分の作品と向き合っている。
展覧会に出展すれば必ずトップの賞に入るが、思う結果が出なければ素直に悔しがり、次に向けて意欲的に取り組む。
「道」とつくモノには終わりはないのだろう。
師範であっても、教授であっても、ちょっと怠ければあっという間に腕は落ちる。
書体も苦手があって、私はよくジレンマに陥る。
そんな時いつも先生はこう言う。
『さっと書けたら面白くないじゃない。良かったね、まだやることがあるって。よっしゃー!やってやろうって気になるじゃない!』
恐ろしいくらいスーパーポジティブである。
苦笑いの私だけど、結構救われる。
このポジティブ感は決して押し付けてこないのだ。
サラッと言って終わり。
そして、先生自らやって見せている。
やり過ぎて体力消耗で寝込むパターンが多くて気が気ではないが。
先生自身もプライベートでたくさんの悩みを抱えてこられていた。その悩みを持ち前の好奇心と活動力と挑戦することで、たくさんの解決をしてきた。その姿を私はずっと見てきている。
試行錯誤を繰り返し、時には私に相談してくれて一緒に考えたりしてきた。
人間はいつでも、いつからでも成長出来るのだと目の前で見せてくれる。
そして、人間は成長し続けなければならないのだと思わせてくれる。
お稽古時間は、私を無の世界へ連れていってくれるとともに、色々学べる時間となっている。
年齢を考えると同じ時間を過ごせるのも本当に僅かだろう。
まだ苦手な臨書もある。教わりたいこともある。
だから辞められないのだ。
writing:代表理事 杉山有希子